"宇宙においてもっとも理解しがたいのは、宇宙が理解可能だということだ"
アルベルト・アインシュタイン
お久しぶりの日記更新。
現在、色々と佳境。
取り合えず論文2本でけた。
もう少しだ。
今回は書くこともあんま思いつかないので本の紹介。科学読み物全般について。
いっぱい思いつくんだけど、どうしようか。
「
フェルマーの最終定理」サイモン・シン
やはり科学的読み物という意味では、サイモン・シンを取り上げずにいられない。
とにかく上手い。読ませる。熱くて切ない人々のドラマがある。
それでいて、数学や科学と言った世界での大まかな歴史を一本の線に乗って概観する。
科学読み物としては理想的だと言える作家。
翻訳も素晴らしいのだけど、近く原著を買おうかと考え中。
1冊目はこの「フェルマーの最終定理」。
フェルマーという17世紀の天才アマチュア数学家が、自分のノートの切れ端に
「nが3以上のとき、n乗数を2つのn乗数の和に分けることはできない。この定理に関して、私は真に驚くべき証明を見つけたが、この余白はそれを書くには狭すぎる」
と書いたがゆえに始まった300年に渡る数学者達の物語。
数式で書くと
x^n + y^n = z^n (n=3,4,5,6,…)となるnは存在しない、というもの。
(注:x^nはxのn乗を示します。)
このnが2の場合が皆さんご存知のピタゴラスの定理、もしくは三平方の定理となります。
nが2では成り立つのだけど、3以上にすると成り立たない、というのがこの定理。
そしてその証明をフェルマーは見つけたと言っているけど、その肝心の証明は見つからないまま。
そこから物語は始まります。
このフェルマーの最終定理の面白い点は、問題を理解するのは随分簡単なんだけど、その証明となると歴史的な天才数学者を何人も退けた超難問へと化すというところ。
それゆえ、プロの数学者からアマチュアのパズルマニアまで多くの人を巻き込むことになり、数多くのドラマを産むことになります。
たくさんの絶望があったのだけれど、300年の時を経て1人の男性により証明がなされた時の感動はもう泣けるの何のって。
余談だけど、この定理は脚本家の三谷幸喜氏が古畑任三郎シリーズで二度ほど「ファルコンの定理」として登場させてますね。
たしかクイズ王のやつと、特番の陣内孝則が犯人のやつ。
この問題にまつまる数学者達の生き様が生き生きと書かれているだけでなく、数論という立場で見た数学史としても見事に整理されてるのが良い。
数学とは何か、証明とは何か、をあらゆる人に問いかけ、学者達の生き様を通して読者自らにその回答を探らせる。
中学や高校の各教室にこの本置いておくだけで、理科離れが劇的に解消されるんじゃないかと思うくらい。いや、ホント。
また、この定理の証明に大きな役割を果たした日本人数学者のストーリーが十分にページを取って紹介されているのが、同じ日本人として大変嬉しいです。
そして2冊目が「
暗号解読」サイモン・シン
文明発祥の時代から続く暗号解読者と暗号作成者の長きに渡る戦いの物語。
当然その戦いは現在でもまだ終わりを告げていません。
この本は暗号というものが如何に歴史に影響を与えて来たのか、という点が実に面白い。
戦争の勝敗から、王族の処刑から、果ては埋蔵金のゆくえまで。
暗号解読のために現代のコンピューターの基礎が作られたというんだから、その影響は計り知れない。
かつては言語学者のものだった暗号の領域が、やがて数学者のものとなり発展を続ける。
その一連の歴史の流れをその実際のテクニックと共に紹介し、それにより変わり得たかも知れない歴史というものを読者に楽しく想像させます。
ネット全盛の時代にあって、かつてなく暗号システムの重要さが高まる中において、自分の生活が何によって守られているかを知るのも楽しいと思います。
これも本当にお薦めの一冊。
3冊目が「
宇宙創成」サイモン・シン
個人的にはこれが一番好きなんだけど、それはやっぱり僕が宇宙の人間だからだろか(?)。
ビッグバン理論にまつまる科学と天文学のドキュメント。
ビッグバン理論っていうと、宇宙の始まりが大爆発だという例のアレですが、冷静に考えてみると、よくそんなもんを学者は真面目に唱えてるなという気がしたりしません?
おかしいでしょ。大爆発て。そんな荒唐無稽な話、普通に生きてるだけなら誰だって想像しないでしょ。
でも、それは長きに渡り、何度も何度も観測し、理論的に肉付けし、観測により検証し、エラーを見つけては修正する、という一連の手続きを、その時代時代の学者達が、持てる全てを出し切ってやり切ってきた結果なのです。
事実は小説よりも奇なりという諺の例としてこれ以上相応しいものもないでしょう。
訳者の青木さんも指摘していますが、この本はビッグバン理論の物語だけでなく、科学者が如何に科学というものを実行するか、というその集大成が書かれています。
科学者は何を考え、何を間違え、何を修正し、何と戦って、何を作り上げるのか。
この本を読むと、今は間違いとされる過去の理論とそれを唱えた学者達に対する尊敬すら生まれて来ます。彼らが間違えたから今があるのだと。
特にフレッド・ホイル。すげーよ、あんた。
もちろんビッグバン理論もいつか破られて、新たな理論に取って変わられる日が来るかも知れません。もしかして宇宙にはじまりなんか無かったと言う日が来るかも知れません。
でもこれだけは断言出来るでしょう。だから科学は面白いのだ!と。
万人に分け隔てなくお薦めした本。
なお、相変わらずですが、簡単な天文学史のまとめとしても非常に整理されています。
もちろん20世紀以降に「天体物理学」として発展した全ての内容を網羅することは出来ませんが、おおよそのエッセンスは含まれていると思って良いでしょう。
いやー、それにしても、ハッブルは格好いいな! 観測屋の鏡だな!!
最後にもう一冊。サイモン・シンばかりだとあれなので別の作家から。
「
かくて世界に不確定性がもたらされた」デイヴィッド・リンドリー
アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルクの3人を軸とした、量子力学の誕生にまつまるドキュメンタリー。
これがまた面白い。
今日、紹介した本どれにでも言えることだけど、とにかく人物の描写が楽しい。
シュレディンガーに愛人がいたとか、パウリは夜型でゾンマーフェルトの講義をサボってたとか、ハイゼンベルクが何日の何時にどの列車に乗ったとか、そんなもんよく調べたな!というものばかり。
うん、でもこういう裏話でテンション上がるのは、最初からそれらを知っている人だけという可能性は否めない(笑)。
サイモン・シンほどに初心者向けには書かれていないかも知れないけど、でもこの「不確定性原理」という概念が如何に今日において重要であるか、ということは良く学べるはず。
そしてその概念は何もハイゼンベルクらと共に華々しく登場したわけではなく、ボルツマンやキュリーらの時代からジワジワと広がっていたのだということが分かります。
古い科学の概念が捨てられ、新しい概念が迎えられる。その時何が起こるのだろうか?ということが実に巧妙に書かれています。
表紙の写真は有名物理学者目白押しのソルヴェー会議の写真ですが、これにテンション上がる人が読んで外れることはまず無いでしょう(笑)
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